*レンブラント「机に向かうティトゥス」

館長の美術旅行記X

W・ハーヒト「アペレスの画室」アレキサンダー大王の前でアペレスがカンパスペを描いている

ダウ「レンブラントの母親(本を読む老婆)」(部分)

フェルメール「真珠の耳飾の少女」

レンブラント「スザンナの沐浴」(部分)

イーゼルもパレットも筆も裏返しのカンバスも影も

国立オランダ美術研究所(ガラスにrKD) 駅前からハーグの新興ビル遠望,右端前方がビネンホフ方面 土産物店のデルフト焼各種

マウリッツハイスを見通せる朝の広場にて 左奥がビネンホフ,右がマウリッツハイス美術館  前夜のライトアップされた美術館

騙し絵展から.カーテンは引けません   ワックスシールで止まった紙も木枠も一枚の絵

左奥のは開きませんが,右の絵は開きます.枠は松の板,ではなくて絵. 内側から見てもこの通り

右奥が特別展の入口  17世紀オランダ様式の机

ヴァン・ダイク「収集家ステーフェンスの肖像」 ボスハールトの花卉(かき)画

マウリッツ伯の肖像画 ホントホルスト「フレデリック・ヘンドリック公の肖像」 階段ホールの展示室

レンブラント「テュルプ博士の解剖学講義」 同「キリストの神殿奉献」(部分)

ダウ「若い母親と子供」(部分)         マース「レースを編む老婆」


ホーホストラーテン「手紙を読む女性」 ヘルデル「シメオンの賛歌(キリストの神殿
奉献)」(部分)

アーフェルカンプ「冬景色」   バッケル「羊飼いに扮する自画像」


サーンレダム「ユトレヒトの聖マリア教会」   レイステル「女に金を差し出す男」

ヘイデン「旧教会のあるアムステルダムの風景」 メツー「音楽の集い」


I・オスターデ「居酒屋前の旅人達」 メツー「羊飼いの礼拝」 テルブリュッヘン「聖ペテロの解放」 カエルがどの絵にいるか分かる方先着1名に粗品進呈


池の向うにマウリッツハイスとビネンホフ   ウィレムX世ギャラリー,閉館中        ブレディウス美術館の室内

ブレーンベルフ「モーゼの発見のある風景」  同「天使と格闘するヤコブ」

ブレーンベルフ「」      同「」           ブレディウス美術館の食堂展示室        ホルスト

レンブラント「キリスト」            A・ネール「氷上の景色」    A・カイプとしてはめずらしい「夜景,または嵐の前の風景」
<ロッテルダム>

ボイマンス=ファン・ブーニンゲン美術館の入口   ダリ展にあわせた特設チケット売り場    例によってゴッホ「アルマン・ルーラン」

クールベ「オルナンの風景」         19世紀の部屋で....      古典絵画部門の階段にも突然トカゲの彫像が!

P.ブリューゲルT世「バベルの塔」(小バベル) 部分(向かって左下)              部分(向かって右下)

カレル・ファン・マンデル「ヨルダン河を越えるイスラエル人」 *ルーベンス「聖リヒヴィヌスの殉教」習作 J・ブリューゲルの花卉画 ヴァン・ダイク「聖ヒエロニムス」


*ホルツィウス「ヘルメスからアルゴスの眼を受け取るヘラ」 *ハルス「男の肖像」 *モレールセ「ウェルトゥムヌスとポモナ」 *テル・ブリュッヘン「聖ヒエロニムス」

ラストマン「福音書記者ヨハネ」 レンブラント「The Concord of the State」

*フリンク「夫婦の肖像」 同「眠るキューピッド」 *ボル「ポーランドの服を着た少年の肖像」

バッケル「少年の肖像」 *S・コニンク「金の目方を量る老人」 ポウディスの静物画 ホーホストラーテン「自画像」

ヘルデル「アブラハムを訪問したエホバと天使たち」  部分(エホバ)    *J・ブライ「モーゼの発見」


風景画の展示室                   セーヘルスの風景画               ホイエンの風景画 1640年ごろか

*P・コニンク「川のあるパノラマ風景」       *J・ライスダール「小麦畑」             *同「冬景色」

H・サフトレーフェンの風景画            J・ボトの新イタリア的風景画            A・カイプの風景画


ヘルスト「シャボン玉を吹くキューピッド」 *ポスト「マノアの燔祭のあるブラジル風景」 *カルフの静物画 *ベイエレンの静物画

*ヘルスト「夫婦の肖像」  デ・ホーホの室内画     オフテルフェルトの室内画   A・オスターデの風俗画      デ・ウィッテ「教会の内部」

奥に「水車」の原画を見ながらタッチ・スクリーンで解説 J・ライスダール「水車」 メッヘレンのフェルメール贋作「エマオのキリスト」
<アントワープ>

Park Plaza Astrid Antwerpの客室
3月22日火曜 午前 ハーグ観光
 午後 ロッテルダム観光〜アントワープへ


 今朝はマウリッツハイスの開館時間に合わせて予定を遅く組んでいたので,朝9時国立オランダ美術研究所RKDを覗いてみたが,残念ながらここも10時からの開館だった.ホテルをチェックアウトして荷物のみ預け,ビネンホフ(国会議事堂)手前の広場を抜けて,マウリッツハイスに10時直前に到着.地階の入口から開館一番乗りはTakさんだった.


★★★* マウリッツハイス美術館

 開館時間 火〜土曜は午前10時〜午後5時 日曜・祝日は午前11時〜午後5時まで.
月曜(4/1-9/1までは開館)・1/1・12/25 休館  入場料 EUR7.5
写真撮影可

 ミュージアムショップは地階の受付フロアの奥にあり,カウンターが移ってやや広くなった印象,クレジットカード使用可.
 レストランはないが地階にコーヒーコーナーはある.

・「Carel Fabritius 1622-1654 de Jonge meester」(昨年9月からのファブリチウス回顧展図録) EUR27.5
・「Vermeer in het licht(=in the light)」 95年刊(蘭).2作品修復過程での新知見をまとめたもの. EUR8.85
・「Uit de Schatkamer van de Verzamelaar(収集家の収蔵室から)」95年刊(蘭) EUR4.5
・絵葉書 EUR0.8(シャボン玉を吹く少年の)

 1640年頃に建てられた,フレデリック・ヘンドリックの甥のブラジル総督ヨハン・マウリッツの屋敷を利用した美術館.そのため建物は小振りであるが,そこにあるフェルメールを中心とするオランダ17世紀絵画の数々は,オラニエ家のコレクションに19世紀末館長となったブレディウス以降の購入にいたるまで,まさに逸品揃いで,珠玉のコレクションの名にふさわしい.

 1階ではフランドル派の常設展示のほか,展示室の半分を使って,コルネリス・ヘイスブレヒツC.Gysbrechtsの騙し絵(トランブ・ロイユtrompe-l'oeil)展「Bedrogen Ogen(=The eye deceived)」(2/5-5/15)が開催されていた.この画家は騙し絵に長けていて,17世紀後半にデンマーク宮廷で活躍したことから,今回の作品群もコペンハーゲン国立美術館からの貸出が多い.イーゼルを模して描かれていた作品が圧巻.無料の小型ブックレットも配布されていた.

 2階はオランダ絵画の名作の常設展示.階段ホール展示室では,あまり展示替えはない印象.私の絵画館の新収蔵品の画家ホーホストラーテンによる,回廊の遠近法が強調された「手紙を読む女性」の女性と犬がかわいいから好き,とは学芸員.そこから,レンブラント派の展示室,ポッテルの「雄牛」のある部屋へと回る.普段はぐるっと一周できるのだが,今回は行き止まり.
 戻って,ホール向かいのフェルメール展示室へ.ここには「デルフトの眺望」「真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)」「ディアナとニンフ達」だけが架けられていて,やはり奥の扉は閉ざされていた.3/25から始まるフェルメールの傑作「絵画芸術(画家のアトリエ)」展示に向けて改装中とのこと.残念ながら,いつもお目当てのF・ミーリスの「シャボン玉を吹く少年」のオリジナルは展示されていなかった.展示替えは少なからずあるようだ.

 ここでマウリッツハイスのコレクション・ベスト10を挙げてみよう.

@フェルメール「真珠の耳飾の少女」
Aフェルメール「デルフトの眺望」
Bレンブラント「テュルプ博士の解剖学講義」
 レンブラントは約7点ある
CJ・ライスダール「ハールレムの遠望」
Dハルス「笑う少年」
Eポッテル「若い雄牛」
〜ここまではこれで決まりでしょう〜
FF・ミーリス「シャボン玉を吹く少年」
Gカレル・ファブリチウス「五色鶸」:明るいクリーム色の壁に小鳥が描かれた小品.ブレディウスが見い出した.昨年9月〜今年1月の回顧展が開かれていたが,現在ドイツ・シュベリン国立美術館に貸出中(5月まで)で見られず.
Hステーン「親に倣って子も歌う」または「牡蠣を食べる娘」.一般的にはもっと評価は高いのでしょうが,個人的にステーンの描くゆがんだ顔が好きではないので...
Iダウかテル・ボルフの作品....決められない.フランドル派からボスハールトの花卉(かき)画か,W・ハーヒト「アペレスの画室」を挙げようか.
 この他,館長の関心は16世紀でH・ボル「パトモス島の聖ヨハネのいる風景」,ウテウァール「ヴィーナスとマルス」,レンブラント派でフリンク「少女の肖像」,ヘルデル「シメオンの賛歌」,S・コニンク「三賢王の礼拝」など,またアーフェルカンプやヘイデン,S・ライスダールらの風景画,アンラートの静物画などもお気に入りである.
 さらに,ウェイデンの「哀悼」に代表される15〜16世紀ネーデルラント絵画の佳作やホルバイン二世やクラナッハの数点の作品があることも付け加えておく.

 11時過ぎにここを後にして,池を巡り,対岸のオランダ最古の美術館というウィレムX世ギャラリーに寄ってみるが,改装中で2007年開館予定とのこと.なるほど話題に上らなかったわけだ.この隣は古代拷問器具博物館.Takさんは少なからず関心があったようだが,残り全員の反対に遭いあえなく中止.

 道を半ば戻って,ブレディウス美術館の開館を待つ間,予告なく(=アポなしで),隣のホーホシュテーデル画廊に乱入する(ドアがなかなか開かなかったが).快く1階の展示品を見せていただいた.バッケルの肖像画に見るものがあったが,J.ブライからバッケルにアトリビューションが変わったという少女達の肖像画は得心が行かず,ヘルト・ストカーデの「王と巫女」は,洗浄により女性が書物を持った巫女であったという話には惹かれたが,買気が無いと分かったのか15分ほどで用があるからと追い出されてしまった.
 12時少し前だったが,ブレディウス美術館の受付の方は親切にも招き入れてくれた.

閑話休題
 ハーグには,このほか,市立美術館やメスダク美術館があり,バルビゾン派やハーグ派のコレクションも充実しているそうです.メスダクの「パノラマ」は実物を一見する価値が大いにありそうですね.市立美術館には,古典絵画も少数ながらあるらしいのですが展示されているかどうか.ヨンキントは12点,ゴッホが4点あるとのことですし,モンドリアンにいたっては164点と世界最大のコレクションがあるそうで,ついでに古楽器の展示もあるとか.

★★ ブレディウス美術館

 開館時間 月〜土曜は午前10時〜午後5時 日曜・祝日は午前11時〜午後5時まで.
1/1のみ休館  入場料 EUR4.5
写真撮影可

 ミュージアムショップ・レストランやカフェは無い.クレジットカードは使用可だが,やや不便(複写紙のままだったはず).

 1階では,親イタリア的風景に細密な歴史画的小人物群像を配した画家B.ブレーンベルフの特別展として絵画10数点と素描が展示されていた.2階は19世紀末にマウリッツハイスの館長を務めたブレディウス博士の個人コレクション約60点を常設展示.企画展のため展示に変更があり,前回みた作品の一部がなかったようだが,個人宅で自然な形で絵を見ることができ,食堂も当時のままで公開されている.レンブラントの「キリスト」(この真贋については,GersonはBrediusの意見を尊重しているが,反論も多い)を含め,レンブラント派のバッケル,ドロスト(婦人の肖像),エークハウト,ホーホストラーテン(自画像),ホルスト,P・コニンクが各1点ほど.A・ネール,A・カイプ,セーヘルスなどの風景画やエリンハ,S・ライスタールの数少ない静物画,ステーン・シャルケンらの風俗画などからなる.傑作とはいかないまでも,一流画家の一味違った佳作が多い.

 20分ほどで退館して,駅前に戻り,バビロン内でブローチェ(サンドイッチの一種)を買って,途中,昨日回ったデルフトの新旧教会を眺めつつ,ロッテルタ゜ム行きの車中で軽い昼食を終えた.約30分で到着.
 ボイマンス美術館のあるムゼウムパークへは徒歩15分位,トラムでも行けるが,4人ならタクシーが便利.6ドアのベンツで,あらぬ方向に走り出したように感じ,みな不審を感じたが,EUR13ほどで到着.
 美術館の入口の筈だが周りに何の掲示も無く,ピンク色の矢印がある.そこから入るとやはりピンク色のチケット売り場.
"It's all Dali"展をやっていた.これは1月に通過したフィラデルフィアの美術館の巡回展か?? 

★★★* ボイマンス=ファン・ブーニンゲン美術館

 開館時間 火〜土曜は午前10時〜午後5時 日曜・祝日は午前11時〜午後5時まで(6月までのダリ展の期間中は火〜日曜午前11時〜午後6時).
 月曜休館・4/30など祝日は休館になる事もあるので事前にHPで確認のこと
 入場料 EUR8(ダリ展期間中は企画・常設展共通でEUR12).チケットに印刷された絵画が一枚ごとに異なっているのが新鮮.私は「小バベル」のを貰ってしまった.
写真撮影可

 ミュージアムショップは奥を向いて入口の左隣にあり,クレジットカード使用可.カフェ・レストランあり.
・館所蔵のオランダ・フランドル絵画の図録は在庫なし

 個人収集家だった19世紀人ボイマンス氏と20世紀半ばのファン・ブーニンゲン氏のコレクションから主に構成される市立の美術館.古典から現代美術まで展示するのは,オランダの主要美術館としては珍しいかもしれない.これに素描・版画,装飾美術を加えて館の四大テーマとのこと.

 P・ブリューゲルの小バベルにまた会える!ウィーン美術史美術館にある大バベル(大小は画面のサイズの意味だけ)と比べても精緻の極みで,私はこちらのほうが好きだ.10年ほど前に来たときには,急いでいて車で送ってもらった上に建物が改装中で,小バベルしか記憶に無い.ところが,中は迷宮のよう.入口から,奥の建物が現代美術らしくダリ展の会場,右手の階段を2階に上がり(180°回ってから)左に進んで第15室に入り,その左手に18〜19世紀絵画の翼があり,そのまま15室を突き抜けると別の階段室を通って,第32〜46室からなる古典絵画の展示室群となり,ここはイタリア派などの二室を除いてすべてオランダ・フランドル絵画である.

北方ルネサンス傑作選

(1400〜1550 ブリューゲル以前)

伝J・エイク「キリストの墓を訪れた三人のマリア」部分

 この他,3点のボッシュやトート・シント・ヤンス,パティニール他の北方ルネサンス絵画,ロマニストのスコレルや弟子のヘームスケルクなどが見どころ.

 バロックでは,ルーベンスの習作(エスキース)群,レンブラントは「ティトゥス」ほか3点の真作,レンブラント派では,ヘルデルの「アブラハムと天使」(エホバを描いたのはレンブラント派では彼だけらしい.フィクトゥルスに至っては信仰上から新約聖書のモチーフを扱わずキリストも描いていない),ボルの少年の肖像,フリンクは夫婦の肖像(イケテナイとは学芸員)と「眠るキューピッド」(私の絵画館の作品を見慣れていたので,思っていたより随分小さい).今回大きな収穫だったのはポゥディスという弟子の静物画の静謐さに感動したこと.このバリエーションが先日の某オークションで出品されていただけに,もっと早く知っていればと思った.
 風景画のコレクションは層が厚く,アムス国博に匹敵するかもしれないが,なかでもJ・ライスダールやホイエン,H・セーヘルスなどが眼に留まる.ここのH・サフトレーフェンの作品では,丘が画面の半分の高さに設定された構図が私の絵画館のカイプの作品を連想させる.
 加えて,ハーレム派のホルチウスやハルス,ユトレヒト派のモレールセやテル・ブリュッヘンといった具合に,ほとんどの地域・ジャンルの17世紀オランダ絵画が網羅されている感がある.

 じつは,上述の小バベルが来日したことがある.'93年の秋,ボイマンス美術館展で,セゾン美術館だけで展示されていた.あらためて展覧会カタログを紐どいてみると,このときの出品作品のオランダ・フランドルバロック絵画33点(写真で*)は,重要作品が多かったことに今さらながら驚かされた.

 私は思ったよりも早く2時間ほどで古典絵画部門を見終わったが,女性陣はすでに清潔感のあるカフェテリアで休憩し終わっていた.
 それから,Takさんとダリの展示会場をさっと巡って,会場一角の,家具やガラス器などの一時的としか思えない雑多な展示をややあきれながら見てから,入り口に戻った.
ダリ展にて


ガラス器の展示

 Takさんに教えていただいたのだが,そこの照明を落としていた空間は,ライスダールの「水車」やメーヘレンによるフェルメール贋作「エマオのキリスト」などが展示され,前方の透過式タッチ・スクリーンでインタラクティブに画像による解説データ・クラウドが見られるハイテク展示場だった.

 帰りも運良くタクシーを拾えたが,メーターがない?ので問いただしたところ,ボタンひとつで出現するハイテク機器だった.一足違いで駅に着いたため,時間を潰してからホームに出るが,残念ながら15分遅れで運行していた.

 ハーグに戻り,にわか雨に会う.予定通り18:57発の列車を乗り継ぎ,また車中でバビロンのYAMYAMで買ったポークのバーベキューソースかけご飯EUR3を食べたが,美味でお勧め.20時半頃にアントワープに到着.
 アントワープ駅の構内工事は完了しており,壮観だった.ホテルは中央駅の右手向かいで100mのところ.まだ駅前の工事は終わっていない.

 さすがに美術館の掛け持ちで皆かなり疲れていた.


翌日につづく