第1日
 2005年1月25日 久しぶりにオークションに参加するため館長は学芸員を伴って,豪雪直後のニューヨーク(N.Y.)へと旅立った.
 もし購入できなくても,ワシントンでテル・ボルフの回顧展が見れるので,これで満足できるだろう,と館長は思っているが,果たして学芸員はこれらのイベントを楽しめるだろうか??? 今後の館の運営に影響しかねない大切な旅行となる.
 成田出国では,アメリカ便のみスーツケースの開梱検査があるが,靴まで脱げとは言われなかった.今回は,ネットから予約できる席に後尾2列席が含まれ(ここは空間的に余裕があり穴場なのだ),僅かだが価格設定がお得だったため,ANAを使用した.ただ,行きの便では機内サービスが回ってくるのに時間がかかり,少なからず不便も感じた.
 昼食(現地時間の遅い夕食)後,長い仮眠時間があるが,途中で強制的に起こされてカップ麺を供されるのが苦痛だった.ヨーロッパ便ならばサンドイッチなども提供されるとのこと,価格設定の厳しい北米便ならではと納得.
 N.Y.へは行きは12時間のフライトで,日系航空会社の午前便では時差のため同日の午前中に着く.3日前まで大雪であったらしく,ハドソン川の川面には流氷が集まっていた.しかし,学芸員は晴れ女なので,到着時は快晴.入国審査では,両人差指の指紋押捺と顔写真撮影があった.学芸員は鶯のような声をしているため??? Are you an OPERA SINGER? と,からかわれていた.
 空港からはバスかタクシーだが,女性連れでスーツケース,また街路の雪の状況がわからないため後者となる.現在マンハッタンまでは均一料金で$45とのこと(チップ別).宿泊したウェリントン・ホテルはロケーションはベストでガイドブックにもよく紹介されているが,部屋は狭目,荷物置場・セイフティボックスもなく,暖房の配管から騒音が鳴っていてやや閉口.

館長の美術旅行記W

・アメリカ編@・厳冬のニューヨーク・ワシントン

・お勧め度 ★研究者向き ★★一度は行っておきたい ★★★リピートしたい *有名,ないし,きわめて重要な作品がある


凍てついたニューヨークを上空から望む クリスティーズ・N.Y. @ロックフェラーセンター サザビーズ・N.Y.


フィラデルフィア駅を発車(あれは...ダレ?)  ワシントン・ナショナル・ギャラリー


西ギャラリー・コートにて        学芸員の好きなゴッホの自画像    Tomas Coleの4連作から「春」幼子が天使の船に導かれて旅立つ

 
   2階 フロアー案内図


この絵の裏側は?             ダ・ビンチ!              ホルバイン              ラ・トゥール


「レンブラントの宗教的肖像画後期作品展」開催直前で入れず...         あの奥に見えるのは?....  天秤を持つ女byフェルメール!


ホワイト・ハウス


メトロポリタン美術館                         ロビーの階段.壁のプレートには100万ドル以上寄贈した方々の名前が刻まれている


ターナー                                  セザンヌ


ルノワール                                例によってゴッホの自画像       モロー


レイマン・コレクション〜       エル・グレコとレンブラント                        アングル


デ・ホーホ「テーブルで語らう4人」                      メットのカフェテリアにて


「ダンシング・シュリンプ」にて    


カーネギーホールの前で       ブラボー!トランペッターを指名するブーレーズ

 クリスティーズは数年前に移転して,ロックフェラーセンターに入っており,ラジオシティに面して地上階に入り口があり,メインのプレビュー会場に続いている.
 予算の関係で,評価額が高価な作品は見送られ,お目当てはヘイルの「トロイの木馬」,ブレンケレンカムの「魚の鱗を落とす老人」,ベイレルトの「弟子の足を洗うキリスト」の3点だったが,前2者は思ったほどのコンディションではなく,後者も大作のわりに強い印象を受けなかったので,翌日に予定されたオークションへの参加は見送ることにした.
 気を取り直してサザビーズへ.こちらも数年前にガラス張りの自社ビルを建てて,マンハッタン島東岸北よりのYork Av. 72番街に移転している.メトロのアンリミテッド7daysチケットを$21で購入し,最寄のレキシントン街66番駅へ出てから10分以上歩く.雪解けで歩道の端に水溜りが出来ていて危険....
 今回,サザビーズでは,オールドマスター(古典絵画)関係のセールが3日間連続してあり,プレビュー会場も10F,7-5Fに分散している.今回の最有力候補は,あさってのImportantOMP(古典絵画)のセールに出品されるホーホストラーテンの母子の風俗画であったが,とりあえずコンディションはまずまず.スペシャリストからは,「結構問い合わせがあるので値は上がると思う」といわれ,ヤレヤレと思いつつ閉店時間の17時となり,日も暮れた戸外に出た.日本時間では朝の7時,疲労困憊である.

 第2日
 時差のため3時間ごとに目が覚めて,ちょうど5時ごろ起床.ワシントンへはペンシルバニア駅からアムトラックで(前日グランド・セントラル駅では路線が違うので切符を変えなかった).特急Acelaは8時発が運行キャンセル(現地では多いらしい)で,8時10分発のlocal普通列車にした($78).切符売り場の列が異なるので注意.普通列車ではビジネス席以外は指定ではなく,早い者勝ち.混雑はないが約10-15分前に掲示板にTrackホーム番号が表示され次第,乗車したほうが良い.Cinnabonを買っていそいそと乗車.
 約3時間半の旅だが,途中,フィラデルフィア,バルチモアで停車する.事前調査でフィラデルフィア美術館ではダリ展を開催していることは知っていたが,構内にもポスターが.
 同駅を出てすぐ,目に入った建物にChildren's Hospital of Philadelphiaの文字が.あっ,CHOPだ!そこは20年前の医学生時代に2週間研修した病院だった.

 ワシントン・ユニオン駅はショッピング・モールが充実.NYは曇天だったが,晴れ女のご利益で駅の外は気持ちの良い日差し.
ナショナル・ギャラリーはここから歩いても15-20分ほどと思われるがメトロred-lineで一駅のJudically St.で降りる(出口は建築美術館とは反対).なお,メトロの切符を買うときは,運賃マップで確認し+/-ボタンで金額を合わせて右のボタンを押すのですが,切符が勢いよく飛び出し落ちてしまうので,うまく受け止めてください.
 

★★★* ワシントン・ナショナル・ギャラリー

 開館時間 月〜土曜は午前10時〜午後5時 日曜は午前11時〜午後6時まで

1/1と12/25のみ休館  入館料は常時無料
 ミュージアムショップ・レストランともクレジットカード使用可

 17世紀オランダ絵画作品集'95(英)$85
 美術館CD-ROM'03(英)$34.95

 美術館の西館が19世紀までの絵画・彫刻,付属する東館が現代美術に割り当てられている.もちろん,西館へ.到着したのがお昼前だったので,すぐに1階奥のガーデン・カフェで昼食.ビュッフェで約$18はdelicious!
 続いて同館の西翼1階の特別展示室へ.

☆テル・ボルフ回顧展
 なんと特別展も無料の上,特製パンフレットももらえます.

テル・ボルフ展パンフレット
 テル・ボルフの作品が50数点も一堂に会する機会は稀であろう.一言で言えば精緻さが出色で,一瞬の表情を巧みに捉えるところに真骨頂があると思うが,彼の作品にはコンディションが良いものは極めて少ないことがよくわかった.今回,出展されていなかったが,カッセルの作品がベストだろう(旅行記ドイツ編@の2ページめ参照).
 今回,美人のモデルは,画家の妹であることを知った.若い頃の作品にも才能の萌芽を認めるが,晩年の作品は技量の衰えが目立つ.また,2点展示されていた集団肖像画を見る限りでは,この分野にはあまり向いていなかったようだ.

 2階に上がったところにギャラリーコート(天蓋つきの小さな中庭)があり,東翼の60室(だったと思う)の四面に掲げられたトーマス・コールの「命の旅」の四連作が印象に残った.19世紀前半にアメリカに渡って活躍した風景画家であるが,幼児・青年・成人・老年を船に乗った人物として描き,天使に導かれて,祝福・成長・波乱・平静などを風景画の中に具現している.
 西翼に戻って常設展に展示されていたオランダ・フランドル古典絵画を写真に収め,レンブラント作品の一部とフェルメールやライデン精密派の作品が展示されていた2室は特別展開催直前で入れず,学芸員はテル・ボルフ展の見疲れで座り込んでいて,ただゴッホだけをみて帰ったようだ(彼女は隣でちがうちがうといっている).

ワシントン・N.G.傑作選〜30余点〜

 館を出たときはすでに午後4時を回り,隣のスミソニアン博物館を見るには時間も体力もなかったので,徒歩15分のホワイトハウスに向かった.意外と小さくてややガッカリ.

 第3日

 N.Y.のホテルでは一般的に朝食は別料金なので,近くのカフェで,軽食を済ませている.午前中は4回目のメット(メトロポリタン美術館)へ.昨夜は-15℃の冷え込みで今朝も風があり,歩いていると顔の筋肉がこわばってくる.
 N.Y.の地下鉄メトロは路線の色とuptown・downtownの方向を間違えなければ乗り間違えは少ないが,たとえばGreenの路線で,異なる番号(4・6など)が上下に重複して走っている場合,快速運転していて止まらないことがあるので注意を要する.

★★★* メトロポリタン美術館

 開館時間 火〜木・日曜は午前9時半〜午後5時15分  金・土曜は〜午後8時45分まで.
 月曜・1/1・11月第4木曜・12/25休館

 入館料$15(60歳以上$10・学生$7),別館のクロイスターと共通で,日によって色の異なるバッジが入館証
 ミュージアムショップ・レストランともクレジットカード使用可

 今回は,学芸員と印象派を見てから,恒例のオランダ・フランドル古典絵画セクションを回り,見逃していた中央奥のロバート・レイマン・コレクションに向かう.シャンデリアのある邸宅の数室を再現したウィングで,ボッチチェルリの「受胎告知」が有名であるが,珠玉作のみが展示されている.
 ちょうど昼時となったので地階のカフェテリアへ.学芸員いわく,高級学食とのこと,値段も味もボリュームも満足.とくにカボチャとナスの合いの子のような温野菜(何?)が甘くておいしかったデス.

 午後2時からのサザビーズでのオークションが今日のメイン・イベント.メットからは歩いて15分ほどで,20分ほど前に着き,チェック・インはカードでスムーズ.
 ホーホストラーテンの作品は始めから2枚目.学芸員も気に入ってくれている.これまでの調査の結果,真筆でコンディションは良好,19世紀の裏打ちで,評価額はかなり抑え目で,画商からのビッド(入札申込)も入っているらしく,ハンマープライスで9万ドル近くまで考えても良いとアムステルダムの美術史家から勧められている.もちろん今回はそこまで予算が許さない.
 2時を回って,会場も満員となり,初めのロット(作品)〜無名画家の,しかし精緻な静物画〜からスタート.あっという間に評価額の10倍になっている!これが次のロットにどう影響するかは状況次第....いよいよ,私の作品だ!評価額の半額からスタート,意外に上がらない.$?9000で入ってから,後方のビッダー(競相手)と一騎打ち状態で9回の往復の後$?6000で評価額下限を超え,やっと私のもの?と思ったら,電話でもう一声入り,結局$?0,000でハンマーが鳴った.お買い得である!!
 それから,オランダ・フランドル古典絵画(古典絵画とは便宜上,19世紀以前の絵画と理解していただけると簡単かもしれない)の主要作品が終わるまで会場にとどまり,パドルを返却して会場を後にした.地下のキャッシャーで$9500(米国に1万ドル以上の現金やT/Cを持ち込むときには入国時申告が必要)のみ支払い,後は送金することになった.昨年からN.Y.のオークションハウスはクレジットカードを受け付けなくなっている.おかげで,持ち帰ることは出来なくなった.残念.
 サザビーズを出たのは3時半頃,クロイスターを回るには時間が遅すぎ,5番街のブティックで学芸員の買い物に付き合うことにした.ティファニー本店にもよって,内緒でプレゼントも購入.1周年の記念日に渡そう.
 夜はホテルの斜め前の,「ダンシング・シュリンプ」というレストランで,エビ料理を平らげた後,午後8時,隣のカーネギーホールで,夕方5時ごろに購入していた当日券(たしか$65ほど)でブーレーズ指揮ロンドン交響楽団のマーラー5番を楽しんだ.学芸員は寝ていた ZZzzz....

 館長の明日の予定はなくなった.あとは学芸員に任せよう....

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