レンブラントとレンブラント派−聖書,神話,物語  展覧会詳報
    2003年9/13-12/14 @国立西洋美術館(巡回はありません)

 展覧会の構成は 師・レンブラント・工房出身画家 に大別され,おもに物語画(旧約・新約聖書・神話・歴史画)を選んであります.工房出身者は レンブラント風 と その後の独自様式 を比較できる構成にした都合上,必ずしも 物語画とはならず,物語れるような肖像画や風俗画も一部に含まれています.

 前レンブラント派(レンブラント前派 とどちらが正しいの?)には力点がおかれておらず,ラストマンを中心に6点だけ,これをみて 当館の「エリシャ・・・」はヤーコプ・ピナスではなくてやはりラストマン作ではないかと改めて思っています.逆にヤーコプ・ピナスはレンブラントの師であった可能性も指摘されているのに,ヤン・ピナスのみで出品がないのはさびしいですね.ところで,ムーヤールト作の「アブラハムへの啓示」は2年前私が購入を検討して見送った作品で,いまはハーグの画商さんのところにあります(当館の作品レベルをこれで類推してくださいね)

 レンブラント作品は真筆として10点で,新約・旧約が相半ばというところです.私のお気に入りand/or有名な作品で是非観ていただきたいのは,展示番号8.エレミヤ,15.モーゼ,16.ペテロの否認,17.ティトゥス です.
「エレミヤ」 は,かつてその色遣い(衣が古い印刷では青く見えて黄金〜褐色とガウンのエンジ色との対比が美しい)と抑制された苦悩の表現(遠景に描かれる予言したエルサレム炎上を阻めなかった)から,最も好きだった作品で,今回のカタログの表紙になっています.
「石版を割るモーゼ」は初めてみた作品でそのサイズから画集で見ていたイメージよりはるかによかったですね.
「ペテロの否認」では,遠景におぼろげに描かれているのが誰かを見てください.きっと感動します.
「修道士に扮するティトゥス」は,現地で何回も見ていたはずですが,今回なぜか強い感銘を受けました.たぶん他に肖像画が並んでいなかったからかな.

レンブラント工房に属した画家

画家 工房帰属時期 今回の題材別の展示点数
旧約 新約 神話 歴史 その他
リーフェンス 師弟ではなく同格 2 3
@ ダウ ライデン精緻派の始祖 1620年代 兵士や隠者など3
A フリンク      助手
後に歴史・肖像画で大成
1633-40? 3 1
B ボル 後に歴史・肖像画で
かなり大成
1630後-42 1 2 1
C フィクトルス 旧約聖書・風俗・肖像画家 1630後 2
D エークハウト 友人・レンブラント様式踏襲
物語・風俗画家
1630後 2 2 1
E C・ファブリチゥス 後のデルフト派
フェルメールに先駆
1640初 1 2
F B・ファブリチゥス Eの弟 1640初? 1 1
G ホーホストラーテン 画法記述や覗き箱・騙し絵
風俗肖像画家
1640前 1 2
- レネッセ 1
H ドロスト 中期工房で重要
彼のみ後にイタリアへ
1650年代 風俗1 肖像1
I マース 風俗画から肖像画家へ転身 1650年代 1 風俗1 肖像1
J ヘルデル     レンブラント様式踏襲
趣味の宗教・肖像画家
1660年代 3 2 1


・ダウにはもっと良い作品がありますが,私が好きな画家です.細かさと質感描写を堪能してください.

・フリンク・ボル・エークハウトには代表作58,64,69が含まれています.
 [当館の眠るキューピッド はスザンナよりはるかにいいと思うのですが.マノアの燔祭もね]

・ドロストは近年注目されている画家で,18.ダニエルの幻視,83.甲冑を着た男の肖像などは変化してゆく作風の好例でしょう(のちにもっとイタリア風となる).ともに感銘深い作品です.

・ヘルデルも近年評価が高まっていて,回顧展が開かれています.87.主をもてなすアブラハム
89.神殿奉献(シメオンの賛歌)はともに印象的です.ヘルデルの作品には出来不出来の差が大きいのです.物語画として忘れてならないのは「キリストの受難」シリーズで,今回も2点出品されています.
 [当館の天使の肖像や受難シリーズの1点は,これらと比較していかがでしょう]

 出品先はアムステルダム国立美術館から15点,ベルリン国立絵画館から11点のほか,ドイツ・オランダ他の主要美術館です.全体を通じて,ややコンディションの悪い作品が多いことが少し気になりました.展示番号10,12,15,18,50,59,61,66,74など.

 途中に銅版画のセクションがありレンブラント作27点余が展示されていますが,私はまだ知識に乏しいので割愛させていただきました.

主題解説