本作品のオリジナルであるブレディウス444(板 31.4x43.2cm右下に偽署名R[]f[]6[],チューリッヒ,個人蔵;以下,Br.444と略)は,これまでレンブラント作と考えられていたが,1970年代にマウリッツハイス美術館に貸し出されたときから,P.J.J.van Thielが疑義を唱え,その際のX線写真では風景の下に女性の肖像画が存在することが確認されたという.ズモウスキはフリンクのようだと述べ,CorpusではJ. Bruynにより,十分な根拠がないままフェルディナンド・ボルに帰せられている.シュナイダーによれば,「レンブラントの1630年代後期の風景画に見られる田舎の質朴さと歴史を感じさせるモチーフを融合した叙情的な作品」であるが,レンブラントのいくつかの風景画の要素を複合しており,例えば高い木は「石の橋」(1636-38, Bredius 440,板29.5x42.5cm,アムステルダム国立美術館)から,右の城塞は「馬車のいる風景」(1637, Bredius 451,板47x67cm, ロンドン,ウォーレス・コレクション;ただし,これは現在フリンクに帰されている)の城門と類似している.フリンクの特徴として,高い木には羽のような枝があり,建築物なども短い筆運びで多層に塗り重ねられた繊細で細密な技法で描かれており,本図(Br.444)における人物はスケッチ風でレンブラントのような明瞭な輪郭を持たない.レンブラントとフリンクの1630年代後期の風景画の関係からしても,本図は1637-39年頃の作と考えられる.
さて,Br.444と本作品との関係であるが,画面全体としてほとんど同一であるが,中央から右にかけての遠景の細部が省略されており,この点で遜色がある.逆に左右両端は本作品の方がよりワイドに描かれている.また,背景の黄昏の空の色が前者が青が主に対し本作品は褐色が主で,左寄りの木の先端は低い.