フリンクは,レンブラント工房時代にも「シャボン玉を吹くキューピッド」のような作品を残しているが,その後,流麗なフランドル様式を取り入れ肖像画家として名声を博した時期にも,ふくよかな幼児像として,キューピッド(アモル)をしばしば描いている.
 とくに「眠るキューピッド」は,フリンクが好んで取り上げた主題で,少なくとも他に2点以上が現存する.これらでは股間が顕わなのに対して,本作品はキューピットが横向きでハイライトはやわらかそうな臀部に当てられていて,顔は陰になっている(たしかに眠っているときには顔にハイライトは当たって欲しくないですね).1655年の年記のある作品では,本作品と同様に背景にニンフが沐浴しており,当代のフリンク研究者であるズモウスキも本作品を1650年代としている.
 フリンクはまた,眠る子供の素描を残しており,この寝姿の構図は比較的本作品に近い.


ホファールト・フリンク 「シャボン玉を吹くキューピッド」(画布75x92cm;1634年?;ベンティンク・ティッセン コレクション)


ホファールト・フリンク 「眠るキューピッド」(板28x21cm;1639年?;現所在不明)


ホファールト・フリンク 「眠るキューピッド」(画布66x81cm;1655年;個人蔵)


ホファールト・フリンク 「眠る子供」(ペン・褐色インクによる素描 16x15cm;1643年;ルフト・コレクション)